性感染症とは、性交渉またはこれに相当する行為で、皮膚や粘膜の接触によって感染する病気のことです。俗に「性病」と呼ばれるものがこれに相当します。異性間だけでなく同性間でも起こり、自分たちが知らない間に感染を拡大させてしまう恐れもあります。しかも近年、特に若い世代の間で増加傾向にあります。

以前は、梅毒など比較的自覚症状の強いものが性感染症の中心でしたが、現在ではクラミジアや淋菌など、自覚症状に乏しく感染に気付きにくいものが増えてきています。男性よりも女性の方が自覚症状が弱いことが多く、そのため受診や治療のタイミングが遅れたり、他の人への感染を広げたりといったことが起こります。

こういった性感染症は、自覚症状が少ないからといって軽症という訳ではありません。自分が気づかないまま、不妊や子宮外妊娠の原因となったり、妊娠中に母子感染を起こしたり、あるいは子宮頚がんの原因になったりと、重大な結果になることも少なくありません。

今回はそんな性感染症についてご紹介します。

性感染症の種類
■クラミジア

クラミジア・トラコマティスという細菌感染によって起こります。たいていの場合、症状が非常に軽く、自覚症状も認めないことが多いため、治療などをせずに放置されやすいです。

女性の場合、性交渉による感染から1~3週間ほどで、おりものが増えたり出血したりといった症状が出てきますが、軽症のため気付かないことも少なくありません。たまに、激しい腹痛などで受診することもあります。治療されずに長期間の感染が続くと、子宮や卵管の内部、あるいはお腹の中に癒着を起こし、不妊や子宮外妊娠の原因となることがあります。

若い世代に増えていますが、知識と自覚症状の乏しさから蔓延傾向にあります。クラミジアに感染しているなど思いもしなかった人が、不妊や子宮外妊娠をきっかけに気付かれることもあります。

■淋病

淋菌という細菌が原因です。男性では、感染から数日後、尿道に炎症を起こし、排尿痛や尿道からの膿の排出といった症状で気付かれます。症状が悪化すると前立腺炎や精巣上体炎となり、男性不妊の原因になることもあります。

女性の場合も尿道や子宮の出口に炎症を起こします。膿のようなおりものや出血、かゆみなどが出ますが、男性に比べて自覚症状が軽く、放置されることも多いです。そのため、クラミジアと同じく、気付かない間に不妊や子宮外妊娠の原因となることがあります。

クラミジアと淋菌は、同時に感染していることも少なくありません。そのため、病院では両方の検査を行うことが多いです。

■性器ヘルペス

ヘルペスウイルスが原因です。主に唇や口腔内に感染する1型(いわゆる口内炎)と、性器に感染する2型がありますが、近年ではオーラルセックスの一般化により、両者の違いはみられなくなってきています。

このウイルスの初めての感染が性器だった場合、激烈な症状を引き起こします。外陰部に多数の潰瘍(口内炎でできるものと同じ)ができて激しい痛みを生じ、場合によっては歩くこともできなくなります。同時に、外陰部が握りこぶしほどに腫れ上がって尿道が塞がり、排尿することもできなくなります。

治療は抗ウイルス薬を使いますが、症状が強くて飲み薬では対応できない場合、入院して点滴を行います。

このウイルスはいったん感染すると体から出ていくことはありません。神経の中に潜んでいて、疲れたり体調が悪くなっりしたときには、性器や唇に同じような潰瘍を何度も生じさせます。ただし、二度目以降は初回ほどの激しい症状はなく、いわゆる「口内炎」程度で収まることがほとんどです。

■その他

酒かすのようなおりものが増え非常に強いかゆみが出る「カンジダ」、外陰部にカリフラワーのようないぼができる「コンジローマ」、嫌な臭いの黄色いおりものが増える「膣トリコモナス」などがあります。先日お話しした「梅毒」も含まれます。また、「子宮頚がん」を引き起こすHPV(ヒトパピローマウイルス)や、「B型肝炎」、「C型肝炎」、「HIV」といったものも、性感染症の一種といえます。

まとめ

これらはどれも細菌やウイルスが原因ですので、感染を防げばかかることはありません。コンドームは感染予防に非常に有効です。ですが、「コンドームは避妊のためのもの」と思い、「ピルを飲んでいるから大丈夫」などと、感染に対してまったく無防備な人も少なくありません。

また、初期のころにきちんとした治療を受ければ、重症化したり不妊などの後遺症を引き起こしたりする可能性は減ります。ですが、「まさか自分が」という思い込みで放置してしまったり、産婦人科に対する抵抗感で受診や治療が遅れてしまったりすることも少なくありません。特に、10代や20代といった若い世代でこの傾向が強いです。

大切なことは、

(1)性感染症に関する正しい知識を持つこと
(2)避妊対策だけでなく、感染症対策もきちんとすること
(3)不特定多数との性交渉は避けること
(4)「あれ?」と思ったら、すぐに病院を受診すること
です。そして、万が一、性感染症と診断されたら、きちんとパートナーに伝えてください。片方が治療をしてももう片方が放置していると、2人の間で感染が行ったり来たりしてなかなか治らなかったり、他に拡大していく可能性が高まります。

大切な自分やパートナー、周りの人、将来の自分たちの子供を守るためにも、きちんとした知識と対応を心がけて頂ければと思います。

著作:日本はぐケア協会